「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」テレビアニメ版感想

みなさん手紙は書きますか?

実際に手書きで書くということはほとんどないかもしれませんが、LINEだったりファンレターだったり相手に気持ちを伝える機会は現代でも多少はあるかと思います。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンはそんなときに気持ちを代弁してくれる代筆サービス業者のお話でした。

気持ちを伝えることはおろか、自分の気持ちを汲み取ることも苦手な自分にとってはとても素敵な職業だと思います。きっと平安時代の和歌を代筆するひとみたいな感じですよね?

ジョジョ6部の先行配信が観たくてネットフリックスに登録し、ついでにネトフリで独占配信中のヴァイオレット・エヴァーガーデン(テレビアニメ版13話)を観たので感想です。

ネタバレありなのでご注意ください。

総評

まず全体的に絵がすごい。京アニクオリティ。全話が劇場版レベルでした。(素人並の感想)

全体的に動きが少ない作品だからできたクオリティなのでしょうか。そんな神作画のため、画面の力だけで雰囲気に飲まれそうになります。

このお話のざっくりとした要点を伝えると、心を持たなさそうな女の子も実は心があったんだよというお話。

自他ともに心を道具として扱っていた主人公が、自動手記人形という心を届けるサービスに携わることでゆっくりとほぐされていくようにひとの気持ちを感じ始める様子がよかったです。

しかし、心がゆっくりとほぐされていくスピードとは裏腹に、ヴァイオレットの仕事としての成長ぶりが急激すぎてあっけらかんとなることがありました。特に4話と5話の間の数ヶ月の間でスーパー会社員として覚醒していたところ、個人的には3話4話の自動手記人形として一歩ずつ成長していくシーンとそれを見た周りのひとたちがヴァイオレットを認めていく展開が好きだったので余計に主人公の急成長には物足りなさを感じました。

あと主人公や登場人物が泣くシーンがやたらに多い印象があり、観ている側としては泣くに泣けませんでした。

不満点としては、主人公が戦場(いくさば)ガールというのがファンタジーすぎる印象でした。幼女戦記かな?

幼女戦記だって魔法適正というファンタジーの上塗りがあったからこそ作品として受け入れられたのですが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは他の部分でリアルな描写が多いせいで戦場ガールというファンタズィーが作品の外から見ても上手く馴染めていたのか微妙です。

あと、テレビアニメ版を観た後に知ったのですが、2〜4話(とその回の主要人物)は小説にないアニメオリジナルエピソードということらしくて、3,4話が好きな自分にとっては複雑な気分です。

アニメ版で泣けなかった分、もしかしたら原作の小説では泣ける可能性があるかもしれないので原作も読んでみたいなとは思っていたりする。

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各話感想

第1話

兵器として扱われた女の子が平和な世界に馴染めずにいる回。

郵便局で少佐の言葉「愛してる」を、つまり人の心を知るために自動手記人形を目指すという動機付けがはっきりしていてわかりやすかったです。

第2話

同僚紹介回。ここでも主人公の馴染めてなさが強調されていてとてもよかった。

人の心がわからないのに代筆業なんて無理だと思わせておいて、同じように職業と性格が合っていないと感じていた同僚の心を押す流れはいいですね。知りたいことがあるから続ける。好きだから続ける。不適切かどうかは関係ない。と、空気を読めない主人公だからこそ伝えられる想いがありました。

そして給料1ヶ月分をはたいて大切な品を買い戻してくれるシャッチョサンの男気に泣いた。(泣いてはいない)

第3話

ヴァイオレットがドール(自動手記人形)として羽化する一番好きな回。

自動手記人形育成用の学校なんてあるんですね。養成所ビジネスか。

タイピングや正確さは優等生だが、案の定手紙らしい手紙が書けずに落第となるヴァイオレット。

スクールメイトの兄への気持ちを聞き、自動手記人形としての本質である「本当の心を掬い上げる」を実践した結果の、短いけれど伝えたいことがまんべんなく伝わっている手紙を見たときの感動がすごかったです。

そして学校が終わったにも関わらず繰り上げでブローチを贈呈してくれるティーチャーは聖人でした。養成所ビジネスとか言ってごめんなさい。

第4話

まだまだ成長する回。ヴァイオレットとの仲が深まったときの同僚のモノローグがよいのですわ。

「手紙だと心の内を素直に伝えられる」という、手紙を題材にした作品の本質が詰まってました。

第5話

公開恋文回。京アニ顔の姫。

ヴァイオレットに恋の手紙なんて書けんやろ〜みたいなのを期待していたらちゃんとした手紙を書き上げてくる仕事人間に4話までの頃と見比べて寂しくなりました。いきなり成長しすぎてあっけに取られました。

この恋文回、あくまでヴァイオレットの心の成長に焦点を当てているとはいえ、本人たちに書かせなくても結果的には誓約していたのではないか?と思ってしまうのがある。

そして最後に現れる海軍大佐兄、なんで大佐兄貴の仲間がヴァイオレットに殺されてるんだよ。アニメでも説明してよ。

第6話

天文台で写本を行う回。

印象的だったのは、今まで「なんでこの職業やってんの?」→「愛してるを知りたいから」と繰り返し見てきたやりとりの返答が「与えられた役割だから」になっていた部分。成長している。

第7話

劇の物語を書いて傘をもらう回。

当主人公の貴重な料理シーン。「多くの命を奪ったその手で、ひとに与える食事を作るのか」

そして劇作家先生の娘の「いつか、きっと」からヴァイオレットちゃんが燃えていることに気がつく。さらには少佐が死んだことをうっかり知ってしまい、物語の時計は針を進める。

火傷を負ってるという比喩が理解できるようになることすなわち心の成長の結果というのもつらいけど喜ばしいことです。

第8話

主人公闇堕ち回からの戦争回想回。ヴァイオレット・エヴァーガーデンだと思って観ていたものは実は幼女戦記だった。

勝負が決まってから残兵に撃たれる展開あれ苦手。(アッパレ戦国大合戦とか)

第9話

職場復帰回。

手紙屋を救うのは手紙

「届かなくていい手紙なんてないんだ」(アニメオリキャラ)

「してきたことは消せない、でも、君が自動手記人形としてやってきたことも消えないんだよ、ヴァイオレット・エヴァーガーデン」イケボ

第10話

母から娘へのお手紙回。

どうせそういうことなんだろう?と思って観ていましたが、まさか50年分の手紙を書くとは想像していなかったのでよかったです。引っ越すに引っ越せない。(転居届とかすればいいのかな?)

今回の親子の関係がヴァイオレットと少佐の関係に類似している感じなのが10話に置かれた理由なのだろう。

第11話

もと戦場ガールだからこそ赴くことのできた場所(戦地)だったのでキャラクターの過去設定がようやく活用できた話でしたが、作品のテイストが変わりましたね。

戦場を知ってるからこそ届ける価値を知っている人材の物語を見たいのであって、戦場でも届けられる人材はまた別の作品の主人公という感じがする。だから別にヴァイオレットは軍隊相手にも1人で戦えるほどつよくなくてもよかったんじゃないかなって思った。

「もう、誰も死なせたくない」も気持ちとしてはわかるけど話の方向性としては違うんじゃないかなと。

第12話

誰も死なせたくないモードになったヴァイオレットが誰も殺さないどこかの流浪人みたいになる回。やっぱり作品の方向性が違うような気がするでござる。

アクションシーンも出てくるけどこの作品でアクションを求めていないし、無限列車編だし、フルメタルアルケミストだしであまり受け入れられなかった。

第13話

ヴァイオレットに対する大佐兄の評価が落ち着いたのはよかったですね。

そして打ち切り作品のように急に出てきたお母様。息子は心の中に生きている、じゃあないんだ。

おわりに

散々なことを書きましたが、やっぱり絵がすごいのと現代にもひとの気持ちを掬い上げてくれるようなひとがいたらいいなと思えたのでいい作品ではありました。

ただ、他人に薦めるかと言われるとちょっと違うなと個人的には思う作品です。

どっちにせよ、こんな作品を独占配信にしているネットフリックスはずるいなとは思います。ええ。