【ネタバレ】竜とそばかすの姫と大地と呪われし姫君【感想】

2021年公開の細田守監督作品『竜とそばかすの姫』、観てきました。(記事タイトルのドラクエ8は一切関係ありません)

本物の龍(というか人間じゃない存在)が出てくる作品かと思ってたら全然違ったくらいの前情報で観たのでおおまかな感想を言うと、おそらくいい映画だった。くらいの温度感です。

極端に悪いところもなく映像も綺麗だったのですが、ところどころでモヤっとしたところがあったので最後にはおおぅ…となるなど活動は多岐に渡る。

ここから先はネタバレを含みます。

テーマは筋が通っていた

個人的解釈としての大筋は、母を亡くした娘が一人の少年を助けようとしたことで事故の日の母の気持ちを理解できたという成長ストーリーだったと思います。

事故をきっかけに歌えなくなったことも「U」という仮想空間で矯正する流れがスムーズでしたし、1人のファンと関わり、助けるまでに至るという筋書きもよくて、細田監督お得意(?)のインターネットジャンルの真骨頂だったのではないでしょうか。

さらにはそんな主人公の成長を友達や幼馴染が助けてくれたり、父親や近所のおばちゃん達が見守っていてくれてたりとなかなかに人間関係大事みたいなお話でもありました。

ただ、本筋以外の部分がどうもピタッとハマらず、特に、タイトルにもなっている竜くんがただの物語に配置されている少年でしかなく、タイトルで並んでいるそばかす姫とは対等の立場にはいないことが気になりました。

龍といえば千と千尋の神隠しみたいなところがありますが、あの作品のハクはなんやかんやで主人公を助けたり助けられたりの関係でいたはずです。

それに引き換え竜くんは勝手にライブに飛び入り参加して以降ベルに助けられるだけの立場で、ラブストーリー的な「このひとのためなら世界を相手にしても構わない!」みたいな対象にもなりません。(自治組織に囲まれてるベルを助けたと言ってもあれは竜と関わっていなかったらピンチになることもなかったのでノーカンです)

本筋の”母の気持ちを理解する”という落とし所からしたら竜くんは守られる立場であってもおかしくはないですし実際には子供だったのですが、タイトルから想像したイメージとズレがありました。

とはいえ実はしのぶが竜でしたという展開だったら、世間が狭い!となっていたのでそういう意味ではまだよかったのですが、でもそうなると誰が竜でも視聴者的には意外性がないという意味でエンタメ的な盛り上がりに欠けます。

そして、意外性があまりないせいで、途中までの犯人探しで貯まった視聴者の期待値を回収できなかったというのがモヤっとした理由のひとつです。

あとは竜くんを助けに高知から東京まで一人だけでバスに乗ったりとか、虐待父の撃退方法(?)が眼力で威圧だとか、伝えたいことのための演出の一環だとは感じるのですが突飛な展開にちょっとついていけなかったというのがありました。

そもそも、失敗したら世界や家が吹き飛ぶみたいな状況でもなく、主人公に被害がない状況の中で、50億人に素顔を晒すリスクを背負える行動力に対して感動はするけど共感はできないというのがありました。これは川で子供を助けた母親の気持ちがわかるようになれば自然と理解できてくるのかもしれませんが。

忍くんってタイムリープしてる?

ここからは冗談10割で聞いてもらえればよいのですが、しのぶくんはタイムリーパーです。細田監督はやってます。たぶんタイムリーパーじゃないと思います。

作中で時をかける少女みたいなシーンがあったりしたので途中まではタイムリーパー説を適当に押していましたが、さいごまで観てもしのぶっちがベルの正体がすずだということに気づいた理由が明かされてませんでした。もしかしたら小説版とかで明かされてるのかもしれませんが。

コーラス隊のおばちゃんたちが実は知っていたというのも気になるのですが、小声ながらもすずの歌声を知っていたとかおばちゃんコミニュティのネットワークとか実はお父さんが知っていたとか色々あると思います。

対してしのぶくんは謎推理で全世界のアバターの中からピンポイントで幼馴染だと言い当てます。これはもう、とてつもなく思い込みの激しい少年か未来からやってきたかの2択しかないでしょう。

とすると、しのぶくんがやってきた未来では幼馴染が竜くんを助けられなかったことを激しく後悔して社会的に再起不能となり、そんな未来を防ぐために現代の科学を超越したサイエンスパワーでやってきたと仮定することができます。(??)

でなければ、全世界に素顔を晒すというリスク99%の提案を真顔でできるはずがないと思いますし、もし提案できるのであればネットリテラシーが低いか世界が自分中心に回っていると思っている思春期かのどちらかになります。

しのぶくんはやってます。たぶんやってないと思います。

さいごに

映像はTS(とてもすごい)なので全体的にはよかったです。とても夏休みな映画でした。おそらく親世代のひとが観るとまただいぶ印象が違ってきそう。

あと、主人公が子供の頃からiPhoneのGarageBand(Logic Pro?)で作曲をしていてとてもジェネレーションギャップでした。若い才能がこわい。そんなところも含めて親子向け作品だったと思います。

ヒロちゃんがいいキャラしてました。以上!